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薄暗い格納庫。
新型MG(モビルギア)のハンガーデッキ上で、整備士の男と、白衣を纏った女性は、静かに起動の時を待つMGの頭部を見上げていた。
最終調整も各部チェックも数分前に終了した。
「こんなデカイ棺桶が、本当に脳波で動くんですかぃ?」
「全ての制御を脳波だけで行うワケではないわ。このMGに搭載されているバイオ・コンピューターとパイロットの脳波を同調(シンクロ)させて、機体の反応速度を高めるの」
二人共にMGを見上げたまま、そう言を交わす。
「出来るんですかぃ?そんな事」
「理論上はね」
理論上……そう聞いて、男はハッ…と一つ笑い飛ばした。
さすがに少々睨まれたのに気が付いて、男は、いや失敬と手を上げる。
「……で、その適合実験を、子供使ってやるんですかぃ?てか、なんでまた子供使う必要が?」
女性は、深く長い溜め息を吐いた。
「柔軟性の問題よ………二十歳を越えた成人には、適合者が一人もいなかったのよ」
「よく上層部(うえ)が許可しましたね?」
「上層部(うえ)からの命令だもの」
「…………」
男性は驚いた顔してみせた。
「危険性は無い……そう判断されたのと、MGパイロット候補生の経験を積ませるにはいい機会だからって」
「そうやって言えばもっともらしく聞こえるかもしれないですけどねぇ……開発中のシステムの実験台(モルモット)って事でしょ?ようは」
「あんまりな事を言うものじゃないわ……まぁ近々大規模作戦発動の噂もあるし、人員が割けないってのが大きな理由なんじゃない?」
「だと、いいですがねぃ……まぁ、俺達メカニックはMGを万全に整備するのが仕事ですから、余計な心配する必要ないですがね」
男性の言葉に、女性は苦笑する。
「本当……何もなければいいけど……」
呟きは、誰に向けられたでもなく、闇に、消えて行った………
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