序章 救いの手

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私は今祭具殿の前に来ていた……ここに羽入がいるかもしれない……そんな希望を抱いて……。 羽入……あなたがいたから私は今日やっといくら繰り返しても逃れる事の出来なかった運命を乗り越える事ができたのよ……。 私は羽入が鷹野を庇って撃たれた時の事を思い出していた。 ―――――――――――――――――― 「羽入!しっかりして!羽入!! 」 「羽入!おい、目を開けろ! 」 私たちが呼びかけると羽入はうっすらと目を開けた……けれどその瞳はとても弱々しかった。 「……羽入!……羽入!」 「夢を見ましたのです。とても楽しくて、にぎやかで、幸せな夢を……。圭一がいて、魅音がいて、レナがいて、沙都子がいて、詩音がいて、そして……梨花がいる。僕は部活メンバーの一員として、みんなと楽しい毎日を送っているのです。思い出しただけでも……あははは、とっても幸せだったのです」 「……大丈夫……大丈夫よ……これからたくさん楽しい毎日が過ごせるようになる。……どうしても越えることのできなかった昭和58年6月から次の時間へと進む事ができるのよ。夏が終わったら秋になって、それから冬を過ごして……春を迎えて……、は一つ年が上がって進級する。もちろんあなたも一緒に。だから……だから……私を一人にしないでよぉおぉ……!! 」 「……梨花はもう一人じゃありませんよ。圭一たちが梨花の力になってくれるのです。……これからもずっと……」
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