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今日は七夕。
今宵も天の川は見えないらしい。
雲の上で繰り広げられる、幾千年も続くラブロマンスを見届ける事が出来ないなんて……。
僕が彦星なら、一年に一度きりだなんて堪えられない。
君が織り姫じゃない事に感謝した。
幾千年の時を超えて僕たちも巡り逢えた。
いつも君は、手の届きそうな場所に居て僕を癒してくれている。
普段の僕は無愛想で、君を気遣いに甘えてるだけなのかも知れない。
日々の生活に追われ少し疲れた顔の君を、僕が少しでも癒やせたら・・・と、深紅の薔薇の花束を買って帰った。
君にバレないように花束を後ろ手に持ち、部屋のドアの横にあるチャイムを鳴らし、僕の姿が見えないようにカメラが映す位置から少し離れて立っていた。
ドアを開け、顔を出した君の視界を遮るように花束を差し出した。
――薔薇の花びらが勢いよく舞い上がり、僕の目の前が紅に染まった――。
君は突然の花束に驚きソレを跳ね退け、ソコに隠していたナイフが……僕の額に突き刺さっていた。
僕は真後ろに倒れ込みながら、今までで一番の……君の笑顔を見る事が出来た。
……君は……
この時を待っていたのか。薄れ逝く意識の中で、泣きながら笑う君の声だけが「……早く死ね……」と、頭の中に響いていた。
七月七日。
……僕は死んだ……。
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