第9章―町での平穏―

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「なぁにしてるのかな?」 いきなり肩に手が置かれた。 僕は驚き、窓から落ちそうになる。 後ろから手が伸び、僕の体を抱きかかえ、支えてくれた。 そのおかげで体勢がなおり、僕は床に崩れ落ちる。 「ちょっと驚きすぎじゃないかなぁ?」 ファーがクスクス笑っている。 僕は腰が抜けていて動けなかった。 だから顔だけ後ろを向き、ファーを睨む。 「いきなり肩に手を置かれたら誰だってびっくりするでしょう!?」 「ごめんごめん」 ファーは僕の頭を撫でる。 僕は呆れた顔でファーを見た。 「フェイアもシャワー浴びておいで。君は湖に潜ったり土埃にまみれたりしたんだから。 今だから分かるけど、結構君臭うよ?」 ファーは微かに顔をしかめながら手を差し出す。 僕はその手を支えにして立ち上がった。 「上がってきたら魔法の基礎を教えてあげるからね」 ファーはそう言うとヒラヒラと手を振った。 僕は言われたとおりにヨロヨロと風呂場へ向かう。 服を脱ぎ風呂場へ入ると、シャワーを出した。 温かいお湯が体を温め、汚れを流していく。 僕は目の前にあった石鹸で体をこすった。 石鹸がすり傷や切り傷にしみる。 痛みにウッと唸りながらも僕はこすり続けた。
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