第9章―町での平穏―

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体から石鹸を流すと次は頭を洗う。 僕の頭は微妙な臭いがした。 湖の藻などの臭いと砂や土の臭い。 木の葉や花の臭いもする。 これは確かに臭う。 この臭いのままさっき食事をしていたのかと思うと、周りにいた客に申し訳なくなった。 僕は石鹸を泡立て頭を洗う。 頭は体以上に念入りに洗った。 シャワーで流した時には微妙な臭いは石鹸の香りに変わっていた。 他に汚れている場所や、臭う場所がないか入念に確認すると、僕は石鹸を置き、風呂場を出て体を拭いた。 汚れた服ではなく、鞄から出したばかりの綺麗な服に袖を通す。 着替えるまでは気にならなかったが、かなり服も汚れている。 何日も着替えてなかったのだから当たり前か。 そばにあった小さな籠に汚れた服を放り込み、明日の朝に服を洗おうと誓った。 それから濡れた自分の赤い髪を拭きながら風呂場を出て、僕はベッドに腰掛けているファーのもとへと行った。
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