第10章―少女―

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男は背が高く、とても逞しい。 顔には縦に半分に割れた黒い仮面をしている。 男は周りを見渡し満足そうに頷くと、ごほんと咳払いをし大きく息を吸い込んだ。 「皆様! 今日は仮面一座をご覧に来ていただき誠にありがとうございます!!」 男は街中に聞こえるような大きな声で言った。 「この街にはしばらく滞在しようと考えています!! 是非皆様、一度は仮面一座の素晴らしき者達をご覧下さい!!」 そう言うと黒い仮面の男は一礼し馬車の脇へと移動した。 「ではまずはハンズから!!」 黒い仮面の男が言うと、馬車の中から一人の男が出て来た。 奇妙な動物の仮面をしている。 皆の前に立つと、ハンズと呼ばれた男は腰に携えている八本のナイフを取り出した。 そしてそれを全てに空中に放り投げた。 ハンズは両手を横に広げ、うつむく。 民衆は息を呑む。 一本のナイフがハンズの頭上に落ちてくる。 危ないと一人の女性が叫んだ。 ナイフが頭に刺さるっ! 誰もがそう思った瞬間、ナイフが消えた。 次々と落ちてくるナイフが消えていく。 そしてハンズの手にはナイフが収まっている。 ハンズの手は一度も動いていないはずなのに……。 皆は驚いた。 それからハンズに沢山の拍手が贈られる。 ハンズはナイフをしまうと一礼し、そそくさと馬車へと戻っていった。
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