第10章―少女―

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左斜めに割れた仮面をつけた男の子が空に向かって右手をあげた。 右斜めに割れた仮面をつけた女の子が同じように左手をあげる。 二人は顔を見合わせると、あいている手を繋ぎ、上にあげた手を握る。 二人が握った手を開くと、手のひらからツルが伸び始めた。 ツルはどんどん伸びて二人に絡まる。 二人の繋いでいる手まで伸びるとそこから上に成長していく。 ツルはまるで自分の意思があるかのように動き、ツルで大人の頭くらいの大きさの丸い球を作りあげていく。 球が出来るとツルは成長を止め球を地面に落ちた。 少年は球を拾い上げると、ポーンと上に投げる。 するとツルはまた動きだし、籠を作り出しはじめた。 投げた球は見事籠の中に入り、籠は入り口をすぼめ丸い形へと変わっていく。 そうして出来上がったものは球の中に球が入ったツルのボールだった。 そのボールを地面に落とすと、今度は二人で拾い上げる。 二人はうなづき合うとボールにキスをした。 するとボールは次々と花を咲かせ、一面が白い花で埋め尽くされる。 それを空中に投げ、二人が手をかざすとツルは広がり、花が散った。 花びらはヒラヒラと僕達のほうへと落ちてくる。 ツルは広がった瞬間朽ちて、細かいチリとなって落ちた。 その光景はとても美しく、誰もが呼吸をすることを忘れたのではないかと思うくらい静かだった。 メイスとミイスは手を繋ぎ、礼をすると馬車へと戻っていく。 それを見て人々は我に返り、二人に拍手と歓声を送った。 「では最後は我らが仮面一座の花形!! ベルフォート!!」 男が馬車のほうに手を差しだし叫ぶ。 出て来たのは僕と同い年くらいの少女だった。
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