第10章―少女―

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少女の腰まで伸ばした髪は青く、光にあたると、まるで水面のようにキラキラ輝いている。 仮面も薄い水色で、下半分が割れ、口元だけが見えるデザインだ。 少女が馬車から降りると、なんだか周りの空気が変わった気がした。 少女は腰に差している二つの扇子のうち、赤いほうを取り出し、手馴れた手つきで開いた。 そして踊り始める。 踊りはとてもゆっくりで、美しい。 長い袖が髪と一緒にたなびく。 まるで彼女のまわりで風の精霊が遊んでいるようだ。 僕は少女の舞いに見とれていた。 彼女が扇子を持っていないほうの手を握る。 その手を開くと花びらがハラハラと舞った。 それから扇子を一振りすると、花びらが空へと舞い上がる。 舞い上がった花びらの一枚に彼女がそっと触れると、その花びらは赤い炎をあげた。 他の花びらも次々と燃え上がり、同時に人々はわっと驚きの声をあげた。
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