第10章―少女―

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少女はまた手を握る。 開くと今度は水の玉が現れ、水の玉は空中で彼女の舞いに合わせて動く。 それはとても綺麗だった。 それから水の玉は細かい水滴となり、地面に落ちた。 それと同時に少女の舞いも終わる。 少女の舞いが終わると、今までで一番大きい歓声があがる。 受けてもらえないと分かっていても、アンコールの声もあがる。 しかし少女は違った。 扇子をしまい、片膝をついて地面に手を置く。 それから一気に手を上に振り上げた。 すると、土でできた二メートルほどの柱が出て来た。 根元から草が伸び、土の柱に絡まり、大きなオレンジの花を咲かせる。 それから少女が指を鳴らすと、草が一気に燃え上がり、彼女が柱に触れると土の柱は水の柱へと変わる。 変わった瞬間に扇子を出して柱を仰ぐと、柱は細かい水の粒となり、空中に水滴のアーチを描いた。 人々がそれに見惚れている間に、少女は馬車へと戻っていく。 僕は戻っていく彼女を見つめた。 もしかして彼等は……。 ある考えが僕の頭をよぎる。 それをファーに聞こうと思い、僕は最後の男の言葉を聞かずに、宿へと走って戻った。
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