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少年は男達を撒こうとして右へ左へと路地を走る。
僕は男達を見失わないように、けれど男達には見つからないような距離で追い続ける。
すると角を曲がった男達が急に止まった。
僕は曲がり角に隠れ、様子を窺う。
男達が止まったのは、少年が壁に突き当たってしまったからだった。
つまり、少年は逃げ場がないわけだ。
少年は壁を背にして、男達と向かい合っていた。
男達はジリジリと少年との距離をつめていく。
片方の男が少年の腕を掴み、引っ張った。
「離せよっ!」
少年は振りほどこうと必死になる。
だけどそこは子供と大人だ。
力で勝てるはずがない。
もう一人が後ろから少年を殴ろうと、拳を振り上げている。
流石に暴力はまずいだろう。
僕は飛び出し、持っていたパイプで手を掴んでいる男の膝の裏を殴った。
男はいきなり襲いかかった痛みに驚いたのか、少年の手を離す。
後ろの男も突然現れた僕に驚いている。
少年は呆気にとられているようで、僕を見て呆然としている。
「君は……」
「いいから! 逃げよう!」
僕は少年の手をとり、走り出した。
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