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僕と少年は入り組んだ路地を走り続けた。
迷いながらも走り続けていると、通りに出ることが出来た。
通りに出たら人混みに紛れる。
こうしたらきっと逃げられる。
しばらく無言で歩き、後ろを向いて誰も追ってきていないことを確認してから、僕達はようやく立ち止まった。
「大丈夫?」
僕は少年に話しかける。
「……大丈夫」
少年は冷たく言い放つ。
「君さ……さっきぶつかった子だよね……僕を追ってきたの?」
少年は警戒しながら僕に聞いた。
「何か様子がおかしかったから……つい……」
「へぇ……あの一瞬で。君、観察力があるんだねぇ……」
少年は呟く。
「でも、君に助けられなくてもあのくらいの奴らからなら僕は逃げ出せたよ。まぁ、助けられたのは事実だからお礼は言うけど。とりあえずありがとう。じゃあね」
少年は立ち去ろうとしたが、何か思い出したように僕の方を振り向いた。
「そうだ、君……名前は?」
「フェイア……」
「フェイア……か。わかったよ。じゃあね」
そう言うと、少年は人混みの中へと消えていった。
「態度は冷たいけど……なんか不思議な……少年だったなぁ……あっ!」
名前聞くの忘れた……。
僕は聞かれたのに……。
友達とかになれたかもしれないのに。
惜しいことをしたなぁ……。
僕はトボトボと肩を落としながら宿へと帰った。
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