第11章―少年と逃走―

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僕は彼女を食い入るように見つめた。 彼女がこっちを向いたとき、目が合ったような気がした。 それに彼女が僕と目があった時に、一瞬驚いたような顔をした。 ホントに一瞬だったから気のせいかもしれないが……気のせいじゃ無かったとしたら、どうして驚いたんだろう。 僕の彼女に対する疑問は次々と増えていく。 彼女の踊りが終わったら昨日よりも沢山の拍手が送られた。 それからまたアンコールがおこる。 彼女はまた地面に手をつき、昨日と同じ出し物をする。 僕はずっと彼女を見つめた。 すると少女が僕を見ていた。 いや、そう感じただけかもしれない。 こっちを向いていただけだから。 出し物を終えると少女は馬車へと戻っていく。 僕がその背中を見ていると頭の中を昨日の少年の後ろ姿がよぎる。 何故少年が出て来たんだ? 僕は不思議に思ったが、ファーに名前を呼ばれ、はっとする。 ファーは僕の手を引き、宿へと戻る。 宿へ戻ったら僕は窓辺に座り、馬車を見た。 ファーは本を開き、読み始める。 馬車には変わったことはまだなかった。
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