第11章―少年と逃走―

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急に男がぎゃっと叫んだ。 僕はそっと目を開ける。 殴っていた男は遠くの壁にもたれ掛かっていた。 首はだらしなく垂れている。 僕はフォートのほうを見る。 フォートを掴んでいる男は驚いた顔をしている。 フォートは男の手を掴む。 男は小さな叫び声をあげフォートを離した。 フォートの触れた所は焼けただれていた。 「だから君じゃやられるって言ったのに」 フォートは溜息交じりに呟き、絞められていた首をさする。 「こんなことにならずに済むのが一番だったのにな」 「こんのクソガキぃ!」 男は懐からナイフを取り出すと、フォートに切りかかるが、ナイフが届く前にフォートは指を男に向け、ヒョイと動かした。 すると男のナイフはボロボロに朽ちていく。 男は驚き、後ずさる。 それから後ろを向き走り出した。 「逃がさないよ。もう面倒くさいことになるのはごめんだからね」 フォートは手を男にかざし、目をつぶる。 風がフォートの周りに集まっていく。 フォートは目を開けた。 すると突風が男に襲いかかる。 男は吹き飛び、思いっきり壁にぶつかって気絶した。 僕はフォートの力にも驚いたが、それ以上にフォートの姿を見て驚いた。 見覚えのある姿。 フォートの帽子は突風で脱げ、青く長い髪が風に揺れている。 そう……フォートはあの仮面一座の少女……ベルフォートだった。
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