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ギルガが僕らに歩み寄る。
「昨日は本当に助かった。だからアンタらに何か礼がしたいと思ってな」
「そんな礼だなんて……」
ファーは手を横に振る。
「それじゃあ俺の気がすまねぇんだ」
「あれは私達の意志でやったことであって、頼まれたわけじゃない。だから礼なんていらないよ。そういうことだけなら私達は作業に戻らせてもらうよ」
ファーは後ろを向き、僕の手を引く。
「待ってくれ。お前さん達の意志だったとしても、それで助かったのは事実なんだ」
ギルガはファーの肩に手を置いて引き止める。
「だから……頼むよ。礼をさせてくれ」
「何度も言うように礼はいらないから。それじゃあ」
「なら頼み事だ!」
ファーは足を止めた。
ギルガのほうを振り向く。
「頼み事?」
「あぁ。これなら聞いてくれるだろう?」
「……仕方ないな。内容によっては断るけど」
ファーは溜め息をついた。
ギルガはそれでもいいと、嬉しそうな顔をしている。
そして背筋を伸ばし、咳払いをする。
「頼みっていうのはだな……ベルフォートを連れていってくれ」
僕は驚いた。
ベルフォートやメイス達も初めて聞いたらしく、かなり驚いている。
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