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メイスは少し躊躇したあと、僕に頭を下げた。
「頼む、ベルフォートを……アイツを守ってくれよ。アイツは……特別な……家族なんだ」
メイスは僕に頭を下げたまま右手を差し出す。
本当は自分が守りたいんだろう。
自分が一緒にいたいんだろう。
誰かに任せたりなんてしたくなんだろう。
メイスの手が小刻みに震えている。
「……勿論だよ。絶対守ってみせるさ。剣士の誇りにかけて」
僕はにっこり笑い、メイスの手を握り返した。
本当は守れる自信なんてない。
僕は昨日何も出来なかったんだから。
でも、今は弱くても……強くなってメイスとの約束は守ってみせる。
強くなってみせるんだ。
そうしないと剣士として、いや、男として情けない。
「ありがとな。えっと……」
「フェイア」
「そうそう! じゃあ……フェイア、街に戻るか」
メイスは照れくさそうに言う。
「そうだね。僕は荷物まとめなきゃいけないし」
「オレはギルガに殴られる前に手伝ってこないと」
僕達は笑いあい、握っていた手を離し、二人で街へと走っていった。
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