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呆然と立ち尽くし、その建物を眺めていると、急に肩を掴まれた。
僕はハッとし後ろを向くと、ファーが肩を掴んでいる。
「フェイア、ボーっとしないでついておいで。バルファムは広い街だから、ここではぐれたら大変だよ」
「はい……」
僕ははぐれないようにファー達の後についていく。
人でごった返しているこの通りを思い通りに歩くのは、結構労力を使う。
何度も人に流されそうになりながら、一生懸命歩いていく。
どうやらファーは宿を探していたらしい。
数十分歩き続けて、ようやく泊まれる宿が見つかると僕とベルフォートにお金を渡し、適当に部屋を借りといてと言ってファーは宿を出ていった。
ファーは宿の前で待っていたウェインと街の奥の建物の方へと向かっていった。
僕とベルフォートはファーがいなくなった後、言われたとおり部屋を借り、部屋に荷物を下ろした。
「ようやく着いたぁ」
僕はベッドにうつ伏せに倒れ込む。
「すごく大きな街なんだなぁ。人も沢山いるし。面白そうなお店も沢山あった。
そうだ、ベルフォート! 少し街を見に行かない?」
「行かない」
ベルはそっけなく答える。
僕はベルに顔を向けた。
「どうして?」
「あのさ、この街は苦手だって言っただろ?」
「あっ……そういえば……」
ベルは溜息混じりに言った。
僕はそのことをすっかり忘れていた。
「……ファーが戻ってくるまでは部屋にいようか」
「もとからそのつもりだけど」
僕は冷たいベルフォートの反応にちょっと怯みながらも、窓のそばへいった。
そこから街の様子を眺める。
ベルフォートも隣に黙って腰掛け、二人で窓の外を見つめた。
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