352人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなたがフェイア君ですね。ファリストから話は聞きましたよ」
その女性は静かに言った。
髪は金色で腰あたりまで伸ばし、軽くウェーブがかかっていて、とても上品な雰囲気だ。
目は緑色。
とても強い意志を感じられる目をしていた。
声も透き通っているのに威厳に満ちていてる。
「ファリスト。彼はこちらで預かっていいのかしら?」
女性はファーを見る。
「はい。お願い出来ますか。フロージア様」
フロージアと呼ばれた女性は、ファーに優しく微笑むと僕の目を見つめた。
まるで僕の心を見透かすような目で。
僕は目を逸らしたかったがそらせない。
まるで最初に会った時のファーの目のよう。
仕方なく、僕も女性の目を見つめ続けた。
ふと女性が笑う。
「この子は強い子ね。才能もあるみたい。いいわ。私が責任もって預かりましょう」
女性は指をヒョイと動かす。
すると書類の山から一枚の紙が出て来た。
その紙は僕の目の前で止まる。
「フェイア君。この紙に名前を書いて下さるかしら?」
「これは……なんですか?」
僕は女性に聞いた。
「それはここに通うための証明書みたいなものかしら。それがある限り、貴方の命は私達が守りますという契約書でもあるわ」
女性は優しく答えた。
「あの……名前を書こうにもペンが……」
「手をかざしてくれるだけでいいのよ」
僕は言われるがまま、紙に手をかざした。
手を離すと、そこには僕の名前が赤い字で書かれている。
「フェイア・ウィルヘルム。確かに受け取りました。
今から貴方はここの生徒となりました」
女性は指をパチンと鳴らした。
すると扉が開き、一人の男性が入ってくる。
「ロドル先生、彼を寮に案内して差し上げて」
「はい。かしこまりました。
君、ついておいで」
「え、ファーは……」
「彼女は私と少し話がありますから。すみませんね」
僕は少し戸惑ったが、ファーが促したので立ち上がり、男性についていった。
これから僕は今までと全く違う毎日を送ることになった。
最初のコメントを投稿しよう!