第19章―入学試験―

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中に入ると、昨日と同じようにフロージア様が座っている。 僕はごくりと唾を飲み込む。 フロージア様はそんな僕を見て、優しく微笑んだ。 「緊張しなくて大丈夫ですよフェイア。ただそこにある水晶に手をかざすだけでいいのですから」 そう言うと、小さいテーブルに乗った水晶が僕の目の前に飛んでくる。 黒いテーブルの上に透き通った水晶が一つ、キラキラと輝いている。 「それだけなんですか?」 「えぇ。さぁ、フェイア、両手を水晶にかざして。手に神経を集中させてみてください」 「はい……」 僕は一歩水晶に歩み寄り、両手をそっと伸ばす。 水晶を挟み込むように両手をかざした。 心臓はバクバクいっている。 僕は水晶をただジッと見つめた。 何も起きない。僕には才能がないのだろうか……。 いや……神経を集中させてと言っていた……。 僕は目をつぶった。 手に神経を集中させてみる。 手に力を入れすぎてひきつりそうだ。 それでも集中し続けた。 しばらくすると、体の中から何かが沸き上がってくるような感じがする。 熱い。 体の中が熱い。 何かが僕の体内を駆け巡っている。 心臓から足へ……頭へ……そして手に向かっていく……。 手が熱い。 焼けているんじゃないかというくらい熱い。 僕はそっと目を開ける。 すると水晶の中で何かが渦巻いている。 そして水晶から光が放たれた。
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