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僕の正面にいる少女が僕を見てクスクス笑っている。
少女は緑がかったローブを羽織り、胸元に青いブローチのようなものをつけていた。
顔はフードでよく見えない。
僕は笑われたことでムッとなり、埃を払いながら立ち上がった。
「君、今試験受けたんだ?」
少女は僕を見上げながら聞いてきた。
僕は少女の問いかけを無視して、羽織っていたローブに袖を通す。
「昨日来たっていう子でしょ? こんな時期に来るから、みんな珍しがっていたの。君もウィザードなんだね。私と一緒だわ」
「何の用?」
僕は少女を睨みつける。
それでも少女はクスクス笑っていた。
「ただ興味があっただけよ。ファリスト様の弟子らしいって噂が流れてたから。別に用とかはないの」
「じゃあ話しかけなくてもいいんじゃない?」
「別にいいじゃない」
僕は少女に冷たく言い放ったが、少女は全く気にしていないようだ。
「怒っちゃダメよ。魔力の流れが乱れちゃうから。クスクス」
僕はだんだん少女に苛ついてきた。
早くこの場を離れたい。
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