第20章―ハプニング―

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人であふれた廊下を歩き、階段を降りた。 後ろから人が押してくるので、合流している女子から睨まれる。 僕はそんな視線を気にしないで階段を降り続ける。 一階まで降りると、真っ直ぐ食堂へ向かった。 昨日と同じ料理を手にとり、空いている席を探す。 空いている席があったので向かうと、思いっきり人にぶつかってしまった。 「いったいなぁ。どこ見て歩いてんのよ」 「ごめんっ」 僕はぶつかった相手に頭を下げる。 「あっ! その髪にその声は、噂のフェイアだね?」 「え……」 僕は顔を上げ相手を見た。 ぶつかった相手は少女だ。 紫がかった髪を上のほうで二つに分けてしばっている。 目も髪と同じ紫色だ。 大人しそうな雰囲気なのに、どこかやんちゃそうな感じがする。 顔は可愛いのだけれど、左頬に大きな切り傷がついていて、それがその子の可愛さを邪魔している気がした。 ぶつかった少女はというと、にっこり笑っていた。 「どこかで会いました?」 僕は少女に聞いた。 少女は呆然とした顔になると吹き出した。 「フードかぶってたから分かんないかぁ。昨日君に話しかけたでしょ?」 「もしかして……あの失礼な女の子!?」 「そうだよぉ。失礼とはそれこそ失礼な気がするけど、許してあげる。また会ったねぇ、フェイア君?」 少女は少し間延びした話し方で、にこにこと笑っている。 僕はとった料理をテーブルに置き、座った。 少女もなぜか向かいに座る。 「なんで座るの?」 「君に興味があるからよ。フェイア君」 僕は大きく溜息をついた。
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