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ニヤニヤと少年は笑う。
「僕は怪我をしていたかもしれない。だけど、それを人のせいにするのはおかしいだろ? 怪我をしたとしたら、それは僕の実力不足なだけなんだから」
僕は少年の目を見つめる。
「怪我をする原因を作ったのはこいつじゃないか。そうしたらやはりこいつが悪いんだ。実力なんて関係ないね」
少年は少女を指差す。
少女はビクッと体を震わす。
「それは事故じゃないか。彼女がわざとしたわけじゃない。なのに彼女の責めるのは間違ってる。
彼女だって怪我をさせたことを謝っているし、魔力が暴走したことを悔やんでいる。
それ以上何を求めると言うんだ」
少年は黙り込む。
周りも互いに顔を見合わせ、ざわつき始めた。
一人の少年が少女に近付き謝った。
すると次から次へと少女に謝り始める。
少年は戸惑っている。
僕は少年に近付いた。
「他の人は過ちに気付いたみたいだけど。君はどうなんだ?」
「僕は……」
少年はうつむく。
少年の肩に誰かが手をおいた。
「ドリュー。これじゃあ俺達が悪者になっちまうよ。それにこいつ新しく来た奴だろ? 魔術師ファリストの弟子だとかいう奴」
「わかってる! おい、お前!」
ドリューと呼ばれた少年は、肩を掴む少年に怒鳴ると僕を見る。
「お前、名前は?」
「フェイア」
「フェイアか……いくらもう魔術師の弟子だからって、いつか僕に口答えしたこと後悔させてやるからな!」
少年は叫ぶときびすを返し、自分の席へと戻っていった。
それと同時に扉が開き、先生が入ってきた。
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