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「先生」
前の方から声が聞こえた。
ドリューが高々と手を挙げている。
先生はドリューに近付き、魔法陣を見た。
「ほう。良い出来ではないか。皆もこれを見ろ」
先生が指を動かすと、魔法陣が机から離れ空中に浮かんだ。
「この歪みのない線。これを描くのは難しいのだが、ドリューはやってみせた。素晴らしいぞドリュー。それに比べて……」
先生は溜め息をつきながら指を動かす。
すると僕の魔法陣が先生のもとへと飛んでいく。
「この歪んだ円はなんだ。これでは妖精にでさえ襲われてしまいそうだ。魔法陣は召喚したものをその場に押さえつけるために描くものだ。それがこんなに歪んでしまっては……」
先生はわざとらしく溜め息をつく。
ドリューが僕を見てニヤリとする。
僕はムッとなったが、授業中なので気にしないようにした。
「確かファリストの弟子だとか……。私はファリストのように甘くはしないから覚悟するように」
ルシード先生はフンと鼻を鳴らすと、別の机のほうへ移動した。
「ルシード先生はファリスト様が嫌いらしいんです。なんかいざこざがあったらしくて……」
「それって僕に八つ当たりしてるだけじゃないか。子供かよ」
「そうですけど……我慢してください」
僕はウェインを見る。
ウェインは心配そうに僕を見ている。
僕は息を吐くとちゃんと椅子に座った。
先生が魔法陣を僕の机に戻す。
「ちゃんと丁寧に描くんだ。もっと真剣にな」
先生は嫌みったらしく言う。
僕は返事をせずに魔法陣をこすって消した。
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