第22章―悪夢と罰掃除―

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「ただ借りただけでしょ? そんな本借りる人は沢山いるわよ」 ジュリアンはどうでもいいと言うような口調で言った。 「そうだよ。だからそんなに固執する必要はないんじゃないかな?」 「そうかな……?」 僕はあまり納得がいかなかった。 授業で使うような本ではないし、研究に使うとしてもどんな研究なのか。 自分で使うとしたってあれは闇の力。 ファーが手を出してはいけないと言った力だ。 だから、ただ使うだけ、読むだけというのは納得は出来なかった。 「だってキリア先生よぉ? あんなに優しい先生が変なことするはずないじゃない」 ジュリアンがクスクス笑う。 「しかもちょっと脅かしただけで腰抜かすほどなのよ? すごく純粋で、冗談も通じないくらいの人だし。そんな人が何かやってたらすぐわかるでしょぉ?」 「確かに……」 僕はうなづく。 あの先生は隠し事は出来なさそうだしな。 「だから気にしなくていいじゃない」 「そうだ……ね」 僕はジュリアンに同意した。 きっと僕が考え過ぎなんだ。 あんな夢を見た後だから、きっと過敏になってるだけなんだろう。 そう思い、今日のことは記憶の片隅に置いておくことにした。 僕達は寮に戻るとベッドに飛び込む。 整理だけでクタクタだ。 明日もだと思うと気が滅入る。 僕達二人はシャワーで汗を流すとベッドに潜り込み、そのまま朝までぐっすりと眠りについた。
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