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先生はまだ校内を見回っている。
教室の中を隅々まで調べて出る、また違う教室内を調べては出るの繰り返しだった。
ずっと同じことを見続けて僕は飽きてきた。
だけど今の僕自身は、自分の意志とは反対に、先生のあとをつけまわす。
先生はずっと僕に気付かないようで、警戒しながらも進んでいた。
僕は追跡なんてのは上手い訳じゃない。
実際、ベルにだって僕の追跡はバレるくらいだ。
気配の消し方なんて全くもって知らないし、姿を隠すようなことなんて一切していない。
なのに先生は僕に気付かず通り過ぎたり、また進み始めたりする。
変だなとは感じてるが、バレてないことに変わりはない。
僕はひたすら先生の背中を追い続けた。
先生は大体の教室を見終えると、階段に向かって歩き出した。
ルシード先生が階段に向かう廊下の角を曲がると、どこからが低い爆発音のようなものが聞こえた。
ルシード先生はさっと身を翻し、音のしたほうへと向かっていく。
僕の胸は高鳴っている。
恐怖で鼓動が早くなっているわけじゃなかった。
もっと別の感情が僕の心臓の鼓動を早くしているのだ。
先生は廊下を風のように駆け抜ける。
僕は全速力で走る先生のあとを追いかけた。
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