第25章―疑わしき人―

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部屋の扉は直っている。 きっと新しいのにつけかえたのだろう。 夢が正夢ならば、この扉は粉々に砕け散っていたのだから。 扉には立ち入り禁止と書かれた紙が貼ってある。 僕は扉に近づき、そっと触れた。 触れただけなのに扉は中が覗けるくらいまで開いた。 心臓の音がうるさい。 隣に人がいたら聞こえてしまいそうなくらいだ。 ぼくは静かに部屋の中を覗いてみた。 中は真っ暗だ。 だけど風が抜ける音がする。 窓ガラスがないからだろう。 僕は目を凝らして床を見た。 床には夢で見たような爪痕がある。 そのそばには黒いシミがあった。 きっと誰かの血液だ。あそこには人間だったものが倒れていたから。 夢は現実になった。 それとも現実が夢に出てきたのだろうか……。 僕はジッと爪痕を見つめていた。 すると部屋の中で何かが聞こえた。 これは人の声だ。 誰かが部屋の中にいる……。 立ち入り禁止なのに……一体誰が……? 僕はもう少し扉を開ける。 声の正体を確かめるためだ。 少しずつ開けていくと、人影がチラッと見えた。 僕はその人物が誰か確かめたかった。 だから人影を見つめる。 暗いのでなかなかわからない。 だけど背格好から男だということは分かる。 僕はさらに扉を開けた。 僕はそこにいた人物が分かると、扉から離れた。
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