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ジュリアンを宙に浮かせていたのは悪魔の手だった。
黒い毛に覆われた腕に血のように赤い爪。
褐色の手がジュリアンの体を握っていた。
頭には捻れた角が2本生えている。
猿に似た顔をしているが、口からは長い牙が伸びていた。
目はつり上がり、月のような金色をしている。
中心にある黒い瞳が僕を見据えていた。
「この子は物を破壊する衝動が激しくてね。毎回人を殺す度に部屋もボコボコにしてしまって困るんだ」
シリア先生は悪魔の足を撫でながら言った。
「特に人の血を見るのが好きらしくてね……今もジュリアンの血を見たがっているよ……」
先生はクスクス笑いながらジュリアンを見上げた。
ジュリアンの顔は恐怖でひきつっている。
先生はそんなジュリアンを見て笑い声をあげる。
「アハハハハ! 良い顔をしているねジュリアン・ラーゴ! その感情はこの子を高ぶらせるのに! アハハハハ!!」
悪魔が手の力を強める。
ジュリアンは小さく叫び声をあげた。
「ジュリアン!」
「大人しくしていなさい、フェイア・ウィルヘルム。次は君の番だからね」
シリア先生は僕のそばに来て、僕の顎を持ち上げる。
「君は彼女よりもっと苦しめてあげるからね」
先生は僕に微笑みかけると、悪魔に向かって手を伸ばした。
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