第27章―待ち受けている者―

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感覚が麻痺する……。 目は周りが暗過ぎて使いものにならない……。 匂いも感じない。 手を動かしても何にも当たらない。 唯一機能しているのは耳だけだ……。 ジュリアンの気配がしない。 近くにいるはずなのに……。 僕は不安になってきた。 このまま何かで突き刺されたら……何かに潰されたら……僕達は死んでしまう……。 いや、まだ死んでたまるか! 僕は首を振った。 それから目を閉じて心を落ち着かせる。 大丈夫……死なない……絶対に……。 ずっと僕は念じ続けた。 恐怖を感じたらおしまいだ。 絶望したらおしまいだ。 僕は拳を強く握る。 すると辺りが明るくなってきた。 人の声もする。 僕はゆっくりと目を開けてみた。 目の前に広がっていたのは城の中庭。 沢山の剣士が剣を交えて修行している。 僕は呆然とそこに立ち尽くした。 見慣れた人々を見つめていると、急に背中を叩かれる。 僕はさっと振り返った。 そこにいた人を見て僕は息をのむ。 そう、僕の前に立っているのは兄様だった。 「兄……様……?」 「何つったんてんだよ、フェイア?」 兄様は笑いながら言う。 間違いない。 これは兄様だ。 何故、兄様がここに……。
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