第28章―幻影―

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「兄様やめて!?」 「黙れ!」 兄様は容赦なく切りつけてくる。 僕は間一髪でかわし、腰にある剣を抜いた。 そして兄様の二撃目を受け止める。 剣と剣がぶつかり合い、カタカタと音をいわせている。 兄様は僕を剣ごとなぎ払う。 僕は吹き飛ばされ、壁になっている人達にぶつかった。 「兄様……」 「お前はフェイアなんかじゃない……」 兄様の声が低くなる。 兄様は剣を大きく振りかざした。 僕は剣を横にして、受け止める構えをする。 兄様が剣を振り下ろす。 剣が剣にぶつかる。 僕の剣は高い音を響かせながら折れた。 「この、魔物めぇ!」 兄様の剣はそのまま降りてくる。 そして僕の胸から腹にかけて大きな傷をつくった。 傷口から血が溢れ出す。 僕は傷口を手で抑えた。 痛い……血が流れていく……。 僕の体を温かい血が滴り落ちていく……。 夢じゃないのか。 頭が……クラクラする……。 兄様が笑ってる……。 剣を僕に向けている……。 あぁ……僕は殺される。 僕の体に剣が突き刺さる。 兄様は剣を抜き、血を払った。 僕は地面にうつぶせで倒れ込む。 周りの人間が笑い声をあげる。 兄様も笑っている。 こんなの兄様じゃない……。 兄様じゃ……。
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