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「ユーノ……」
─―呪縛の魔法の解除に手間取り、遅くなりました。私の力をお使いなさい……このくらいの魔法壁なら破れますから……。
「だけどユーノはボロボロじゃないか!」
─―私は妖精……火があれば何度でも生まれます……。
─―さぁ……彼女を助けたいのでしょう……力を……望んで…
…。
僕はぐっと唇を噛み締める。
そして目を瞑った。
ユーノの魔力が流れ込んでくる。
熱い火の魔力が……純粋な魔力が。
僕はその魔力を左手に集中させ、魔法壁に当てる。
そして一気に魔力を放出させた。
壁には穴が開き、大きな音を立てて崩れていった。
僕はジュリアンに手を伸ばし、魔法陣から引きずり出す。
ジュリアンが出ると、ジュリアンのいた魔法陣は輝きを失った。
魔力を絞り取る対象がいなくなったからだろう。
僕はジュリアンを横に寝かせると、ふらつきながらも立ち上がった。
先生は僕の行動に気がついていなかった。
ただただ魔法陣を見つめている。
魔法陣は一層強く赤い光を放った。
中心から黒い翼が出て来る。
次にうねった角が。
黒い髪が。
浅黒い肌が。
徐々に姿を現した。
僕は息をのむ。
その悪魔の姿は人間そのものだった。
漆黒の黒い髪に黒い服。
額には赤い宝玉が埋め込まれている。
黒く筋張った翼を広げ、ゆっくりと目を開く。
目は金色で鋭い瞳が露わになる。
その目は先生、次に僕を見ると口を開き、息を吐いた。
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