第29章―招かれざる災い―

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「ユーノ……」 ─―呪縛の魔法の解除に手間取り、遅くなりました。私の力をお使いなさい……このくらいの魔法壁なら破れますから……。 「だけどユーノはボロボロじゃないか!」 ─―私は妖精……火があれば何度でも生まれます……。 ─―さぁ……彼女を助けたいのでしょう……力を……望んで… …。 僕はぐっと唇を噛み締める。 そして目を瞑った。 ユーノの魔力が流れ込んでくる。 熱い火の魔力が……純粋な魔力が。 僕はその魔力を左手に集中させ、魔法壁に当てる。 そして一気に魔力を放出させた。 壁には穴が開き、大きな音を立てて崩れていった。 僕はジュリアンに手を伸ばし、魔法陣から引きずり出す。 ジュリアンが出ると、ジュリアンのいた魔法陣は輝きを失った。 魔力を絞り取る対象がいなくなったからだろう。 僕はジュリアンを横に寝かせると、ふらつきながらも立ち上がった。 先生は僕の行動に気がついていなかった。 ただただ魔法陣を見つめている。 魔法陣は一層強く赤い光を放った。 中心から黒い翼が出て来る。 次にうねった角が。 黒い髪が。 浅黒い肌が。 徐々に姿を現した。 僕は息をのむ。 その悪魔の姿は人間そのものだった。 漆黒の黒い髪に黒い服。 額には赤い宝玉が埋め込まれている。 黒く筋張った翼を広げ、ゆっくりと目を開く。 目は金色で鋭い瞳が露わになる。 その目は先生、次に僕を見ると口を開き、息を吐いた。
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