第29章―招かれざる災い―

5/10

352人が本棚に入れています
本棚に追加
/386ページ
短剣はベルゼブルの足に刺さるが、ベルゼブルは全く反応しない。 このままでは逃げられてしまうっ……。 せめて、先生が来るまでは引き止めておきたいのに……。 僕はうなだれた。 もうダメだと諦めていたら、後ろから声が聞こえた。 「風の精霊ジンよ! 汝の力を我に与えよ! その力を以て行く手を阻みし者共を切り裂け!! ウインドカッター!!」 風の刃が僕を過ぎ、悪魔に切りかかった。 ベルゼブルの服や翼を斬りつける。 僕は振り向いた。 そこにいたのは肩で息をしながら、手を悪魔に向けているウェインだった。 ウェインの左手には僕の剣が握られている。 「フェイア!」 ウェインは僕のところに駆け出した。 ベルゼブルは小さな黒い玉を数発、ウェインに向かって放つ。 ウェインはギリギリで避けながら走りつづけた。 「フェイア! 持ってきたよ! 君の剣を」 ウェインは僕の元に辿り着くと剣を突き出した。 僕はそれを受け取り、鞘から抜く。 そして立ち上がり、悪魔に向き直った。 「ウェイン、援護を頼む。先生達が来るまで……時間を僕達で稼ぐんだ!」 「わかったよ……フェイア!」 ウェインはベルゼブルに両手をかざす。 僕は体に鞭打ちながらベルゼブルに突っ込んでいった。
/386ページ

最初のコメントを投稿しよう!

352人が本棚に入れています
本棚に追加