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ウェインは街中を走り回りながら叫んでいた。
だが、誰一人としてウェインの声に耳を傾けようとしない。
人々は押し会いへし合いしながら、我先にと逃げようとしていた。
「邪魔だ!」
一人の男性がウェインを突き飛ばした。
ウェインの後ろには崩れた家の瓦礫が牙を向いている。
ウェインは固く目を閉じた。
だがウェインの背中に触れたのは尖った瓦礫の感触じゃなく、柔らかい土の感触だった。
「大丈夫かい?」
聞き覚えのある声が聞こえる。
ウェインは目を開けた。
目の前にはファーが微笑みながら立っている。
「危なかったね。こんな所で何を?」
ファーはウェインに手を差し出し立たせた。
ウェインは訳をファーに説明する。
「そういうことなら任せなさい」
ファーはそう言って、息を深く吸う。
「皆落ち着きなさい! ただ単に逃げ回ったって意味がない! 皆で協力するのよ!」
人々がファーを見た。
ファーは余裕そうな笑みを浮かべる。
「水の魔法が使えるものは消火に回りなさい! 全てが燃える前に! 他の者は被害を出来るだけ抑えるために協力しなさい! 子供は優先的に逃がすこと!
自分だけを考えるな!! 協力して街を守れ!」
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