第1話

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「ばーか。俺が言ってんのは彼女って意味だ」 フンッと笑った先生は、またパソコンに目をうつす。 「彼女…」 彼女になれたら、近くで先生の煙草を吸う姿を見れるんだ。 私はまだ、遠目でしか先生が煙草を吸う姿を見れていない。 「ご褒美やったし、早く帰れ」 胸元のポケットから煙草の箱を出し、私に煙草を吸いたいアピールをする先生。 「…はぁい」 私は数学室のドアに向かって歩く。 「桐生」 先生に呼ばれ私は勢い良く振り向いた。 「なに先生?」 「授業中、分かってんのに質問すんな」 先生の目が鋭くなる。 「……分からないから質問を」 「テスト100点採るお前がか?」 ばれてた。 「だって先生と話したいんだもん」 「授業中は私語厳禁だ」 先生は煙草の箱をトントンと叩き、器用に1本の煙草を取り出す。 これはもう1秒でも早く帰れって事か。 「じゃあまた明日。失礼します」 ドアを開け、先生に軽く頭を下げてドアを閉めている時、 「明日はお前のクラスは数学ねぇぞ」 と、煙草に火が付いた音と共に先生のお言葉が聞こえた。  
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