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「ばーか。俺が言ってんのは彼女って意味だ」
フンッと笑った先生は、またパソコンに目をうつす。
「彼女…」
彼女になれたら、近くで先生の煙草を吸う姿を見れるんだ。
私はまだ、遠目でしか先生が煙草を吸う姿を見れていない。
「ご褒美やったし、早く帰れ」
胸元のポケットから煙草の箱を出し、私に煙草を吸いたいアピールをする先生。
「…はぁい」
私は数学室のドアに向かって歩く。
「桐生」
先生に呼ばれ私は勢い良く振り向いた。
「なに先生?」
「授業中、分かってんのに質問すんな」
先生の目が鋭くなる。
「……分からないから質問を」
「テスト100点採るお前がか?」
ばれてた。
「だって先生と話したいんだもん」
「授業中は私語厳禁だ」
先生は煙草の箱をトントンと叩き、器用に1本の煙草を取り出す。
これはもう1秒でも早く帰れって事か。
「じゃあまた明日。失礼します」
ドアを開け、先生に軽く頭を下げてドアを閉めている時、
「明日はお前のクラスは数学ねぇぞ」
と、煙草に火が付いた音と共に先生のお言葉が聞こえた。
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