夏の終わりと新たな始まり

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訳がわからなかった。 わからないだけに、頭に血が上る。 「貴様ぁ!何をしたあぁぁ!」 ロイターンの全魔力が槍へと注ぎ込まれ、槍にあった赤い宝石にヒビが入る。 そして、割れた。 「翼を広げろ、フェニックス!」 槍の柄のボルケーノは消え、今度は尖端が変化した。 その炎は、その名の通り不死鳥を思わせ、方翼約十メートル。 何よりもこの熱量。 圧倒的熱量。 人が触れる事を許されない領域。 それがエレンにむかっている。 さすがにヤバいと、マグナグとティルが動く。 だがそれより早く動いた影が四つあった。 ロイターンは止まる事なくエレンへと。 だが目前になって足を止めた。 止めざるを得なかった。 死、への恐怖。 言葉が出なかった。 息が詰まって、呼吸ができない。 幾多の戦場をくぐり抜けてきた、だがこれ程までに自分が小さく感じる事はなかった。 それぐらい大きな何か。 それを感じてしまった。 フェニックスを維持したまま足が震える。 一秒が何時間にも感じる。 だが、ロイターンに救いの手を差し延べる二人。 「「ユニオン・マジック。アブソリュート・ゼロ」」 膨大な魔力の込められた水と風の魔法陣。 それが重なり合い、六つに別れロイターンを囲む。 そして、凍りついた。
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