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その言葉に安心したのかレイア、ウルルは胸を撫で下ろした。
「それでこそ、エレンだ」
マグナグはエレンに近ずき、頭をくしゃくしゃ乱暴に撫でる。
ちょっとムッときたエレンは凍りつく様な笑顔で冗談混じりにこう言った。
「やめてください。お父さん」
場が、凍りつく。
そんな錯覚と、マグナグの涙。
エレンを拾って約十年。
最初は言葉をなくし、笑う事を忘れ、泣く事も知らず、ただの生き物でしかなかった。
それからいろいろな事を話し、いろいろなモノを見せ、少しずつ少しずつ変わっていくエレン。
言葉を取り戻し、笑顔を思いだし、自分が生きている事を知り、何故生きているかを思いだして、エレンは初めて泣いた。
だけど、「お父さん」。
この十年で一番聴きたかった。
「お父さん」
この言葉。
冗談でも何でも良い。
「お父さん」
この言葉が嬉しい。
だから、噛み締める様に、いつもと違う呼び方で、
「スマンな、息子よ」
と。
その言葉で、マグナグの涙の意味を理解したエレンは、暖かく微笑んだ。
「もー、やめてよ恥ずかしい」
リファも全てを察して場の空気を和らげる。
「スマンスマン。俺としたことがエレンに一本取られた」
そして笑い話しへ。
今はそれで良かった。
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