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「らららららららっ!! とぉーりぃまぁーすっ!!」
と、突如聞こえた奇声に俺と恋華は振り返る。そこには、地に落ちた桃色の雨を巻き上がらせながら走ってくる金髪、坊主頭の知徳。その額には俺が付けた傷が生々しく残っている。知徳がいうには友情の証だそうだ……。
「ちょっと! ペース早いわよ!」
「ふむ、朝から肉体に負荷をかけるのはあまり好ましくないが……!」
その後ろからは緑色のボブヘアーと、体中に纏った色とりどりのアクセサリーを揺らしながら走る、き色の瞳を持つ瀬戸。そして、黒色の坊ちゃんがり頭に、漆黒の異名を持つクロブチ眼鏡を手で押さえながら走る田淵。
「おぃおぃっ、朝から熱いねぇーっ、お二人さんっ! 所で君達は知ってるかぁー!!」
知徳は走るペースを緩めず、俺達の横を通過する。
「遅刻するゾォォォッ!!」
「だから待てってば金髪!! あっ、恋華、桜学校で!!」
「待つのだ知徳……同志たるもの心の歩調を……」 あっという間に全員俺達の視界からいなくなり、後に残ったのは再び舞い上がった桃色の雨。
「行こっか、シオン!!」
「……おう」
恋華に手を引かれ、俺は走りだす。空いている左手を出せば舞い落ちてくる桃色の雨。俺はそっと包み込む。
「……所でさ、シオン?」
「ん??」
走りながら俺に声をかける恋華。どことなくはにかんでいる。
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