夢想への鍵

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窓から差し込む夕日が 真っ赤に駅の歩道橋の中を染め上げる 無人の歩道橋で一度立ち止まり窓を見て…… 壁際を歩きながら階段を下り改札を抜ける 今日も隣の駅の待合所で時間を潰した 日曜に行くと近くの大きな古墳がある野原で 遊び疲れた家族連れが来たときの元気をどこへ忘れてきたのか 力なくうなだれている もうすぐ夏休みか 小さく なんの期待感も込めずに呟く 私は何をしてるんだろ あの少年達は…… ただの幻なのかもしれない 網棚の上で手を頭の後ろに回し 脚を組んで寝転がる白い変な犬 少し寂しげな顔 マントを翻し飛び上がった黒猫 その2人を連れていた線の細い無表情な男の子 かもしれない? 幻なんだろう でも 幻でもよかった もう1度見たい 電車の中の短い非現実 夜は眠る前に何度も夢想した あの男の子 あの後きっと不思議な世界に行き 不思議な体験を何度もする 喋る兎や狐もいるかもしれない 男の子の冒険を何度も夢想し 重ね合わせ 混ざり合い 私もいつのまにか 夢の世界 私の中では確固たるストーリーも出来上がってる 暇さえあればページを捲るように 夢想に入り込んだ もう1年になる
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