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「おぃ!」
ゆさゆさ。
「おぃ!大丈夫か!?」
さらにゆさゆさ。
体が何者かによって揺すられている。
振動と呼び掛けに眠りから徐々に現実に戻ってきた。
「お?起きたか?」
「だ…れ?」
「口は利けるみてぇだな。お前、なんでこんなとこで倒れてんだ?」
日に焼けた浅黒い肌。
腰に剣を差し、頭にはターバンを巻いている。
「……さぁ?」
「さぁって覚えてねぇのかよ!」
ここにいる理由なんて言ったところで理解できるわけがない。
馬鹿にされるだけだ。
そう思ったとき、ある記憶にヒットした。
「…嵐の海に呑まれて…気付いたらここに…」
なんて都合のいい記憶。
それがこの世界での私の記憶。
ここに来た時点で自動でインプットされている。
だからフッと思い出すように出てくる。
それまでは知らなかったはずなのに。
「遭難者か。ここ無人島だぞ?お前このままだと助からないな」
さきほどから話しかけてくるこの男、体に傷が多い。
またヒット。
この世界、今の時代は海賊が多い。
らしい。
すごい人ごとのように語っているが、まぎれもなく“私”の記憶だ。
変だろ?
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