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「あぁ?どれ………ほぅ」
イラついていた目が私の姿を捕えると、眉が片方つり上がる。
興味を持ったのか、岩から飛び下り近付いてくる。
「どうです!?上玉でしょ?」
手をすりあわせてニヤニヤするバク。
はっきり言って気持ち悪い。
「黙れ」
男の一言で縮み上がり、口を閉じるバク。
この男の権力は絶対のようだ。
「お前、名は?」
赤い瞳がずっと見ている。
冷たい瞳…。
「セツナ…」
「セツナか…」
手がこちらに伸びてくる。
警戒心が働き、無意識に1歩後ろに下がっていた。
ズキンッ!
痛みが走る。
ずっと我慢していた痛み。
ここについてこの人の登場で忘れていたのに、また痛みを感じてその場にうずくまる。
「どうした?」
男も同じようにしゃがみ込み様子をうかがっている。
「どこか痛いのか?」
想像していたよりずっと優しい声かけに、
「足が…」
答えていた。
男は手を伸ばし私の足に触れる。
「ちょっと見せてみろ。あぁ~、貝殻で切ってるな。よくここまでこれたもんだ。痛かっただろ?」
「有無を言わせずひっぱってこられた…」
ボソリとつぶやくと、男はバクをギロリとにらみつける。
にらまれたバクは汗をダラダラ流して青い顔をしている。
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