第2話~悲惨な始まり~

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――とは言ったものの…。 「素晴らしいくらいにボロいな…」 思わず呟く。 笑顔でいようと決めたのに、早速挫けそうになっていたりする。 更に問題なのは今の時間帯。 太陽は殆ど沈み、明かりがない。 流石にガスコンロを明かりに使うのはマズい。 ボンベだって2本しか持ってないのだ。 ――無駄遣いは出来ない。 「と、とりあえず食事を確保しなきゃな!」 まるでやる気を奮い立たせるようにわざと大きな声でやるべき事を口に出す。 いきなりレトルトを使うのは無駄遣いだ。 レトルトは食料を確保出来なかった時に使うべきだろう。 となると……まずは魚だな。 ………… …… … まぁ、釣具も持たずに昼間に見つけた川に来た訳だが。 ここなら、釣具は必要ないだろう。 魚がいるのは既に昼間に確認しているし……後は手頃な岩があれば良い。 懐中電灯で川を照らしてみれば…。 「…見っけた」 川の真ん中。 そこからせり出すように大きな岩が鎮座していた。 川縁から拳6つ分程の石を持ち、静かに川の中へと歩を進める。 昼間の熱がまだ冷めないのか、川は未だに温いくらいだ。 「…………到着、と」 岩の傍らに立ち、そのまま静止する。 暗くなってよく見えないが、僅かに魚らしき物が動いているのは見てとれた。 よし。 ゆっくりと手に持つ石を振り上げ……。 「そらっ!」 川からせり出している岩に、石を思いっ切りぶつけた。 その振動は、水を伝わり俺の足にまで衝撃を伝えてくるが、これが狙いなのだ。 予想通りに水面には気絶した小振りな魚が2匹浮かんでいる。 岩打ち漁法だったか…これはれっきとした漁法なのだ。 岩の近くにいる魚に振動を伝える事で気絶させ、採る。 もっとも、本来はハンマーを使うようだが…。 「お~…クソ親父から教わった手段がこんなところで役に立つとは思わなかったな」 ともあれ、今晩の食料は確保した。 後は帰って調理するだけだ。 大漁な俺は意気揚々と我が家へと帰っていったのだった。
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