第2話~悲惨な始まり~

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「~♪」 鼻歌混じりにフライパンの中で良い感じに焼けた鮎を取り出す。 今日の晩飯は実に豪華な献立となった。 ……というのも。 「なんか楽しそうだね?」 「おうよ!沙織が色々と持って来てくれたしな」 そういう理由だった。 魚を持ち帰ったはいいが、帰り着いた瞬間に調理器具がないことに気付き、気分がどん底に落ちていた俺だったが…。 そこに、クーラーボックスにフライパンや包丁、鍋に始まりご飯に缶詰めまで持って来てくれた沙織が現れたのだ。 それも、全て日持ちするようなものばかり。 あの時、俺には本気で沙織が天使に見えたくらいである。 「でも、こんな場所に住めるの?」 「人間どこだって住もうと思えば住めるんだぞ…っと」 本日のメインディッシュである鮎をダンボールで出来た机に乗せ、ご飯も並べる。 更にインスタントの味噌汁を添えれば、立派な夕餉である。 と、その時。 「なんか変わったよね」 「ん?…何が?」 「さっちんだよ。昔は泣き虫で私の後ろを付いて回ってたのに」 「あ~……そういやそうだったか?」 「そうだよ……それが今では逞しくなっちゃってさ」 そう言った沙織の表情は、少し寂しげだった。 「背も、昔は私のが高かったんだけどなぁ~…」 「そりゃ昔の話だろーが。だいたい、それを言ったら沙織だって変わったぞ?」 どこが?と視線で問いかけてくる沙織に、少しだけ思考を過去へ向ける。 昔の沙織の顔や仕草はもう思い出せなかったけど、それでも…。 「綺麗になった」 「え…」 「気がしないでもない」 俺のそんなバカみたいな発言に沙織はずっこける。 「何それ~!?ちょっとドキッとした私が馬鹿みたいじゃない!」 「はっはっは!だってあの頃の事は殆ど覚えてねぇもん」 「………じゃあ、あの約束は?」 「ぇ?」 それは、俺にとっては本当に予想外の反応だった。 先ほどまでの楽しそうな表情は一転して…。 スカートをキツく握りしめる沙織は桜色の唇を真一文字に結び、俯きながら震えていた。 まるで、今にも泣き出しそうな…。 いや、それよりも彼女をここまで真剣にさせる約束ってのはいったい? 先ほどよりも更に深く。 記憶を最速で辿ってみるしかないらしい。
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