第3話~既知感~

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さて、いまいち状況が飲み込めない。 目の前では地べたに座り、黙々と箸を進める七海。 そして俺の横に寄り添うようにして皿に盛られた飯を貪る野良犬。 つーかだな…。 「――(気まずいッ…!)」 会話のない食事がこんなに気まずいとは知らなかった…。 いや、その前に…何だって七海が俺ん家に来て飯食ってんだ? 「そ、そういえば七海は何か俺に用事でもあったのか?」 意を決して話題を振る。 だって本当に気まずいんだもん! 想像してほしい。知り合って間もない異性と2人っきりで会話もなくテーブル(段ボール素材)を囲んで食事している光景を…! 俺ぁそんな苦行に耐えられる程逞しく育ってない! だが…。 「別に」 あぁ無情。七海は目すら合わせずに短く答えると再び箸を動かし始めた。 こりゃあ新手の拷問ですか?そうですか…。 今すぐ箸を投げ捨てて走り去りたい衝動をグッと抑え、俺も箸を動かし始めた時だった。 「やっほ~さっちん!今日も遊びに来てあげたよー!」 脳天気な声と共に沙織が入ってきた。 だがこの状況ではまさに救いの女神! おぉ…沙織から後光が差している。 まぁ、太陽が沙織の頭の後ろに位置しているだけなんだが…。 「あれれ、七海も来てたんだ?」 「ああ飯持ってきてくれたんだよ」 「このワンコも?」 未だに飯を貪る犬を指差しながら沙織が首を傾げる。 「いや、そいつは今朝起きたら俺ん家にいた。多分…野良じゃねぇかな?」 「まさか飼うの?」 「ん~……それは無理だなぁ…」 なんせ自分の食事すら危ういくらいなのにペットの世話なんざ出来るとは思えない。 仮に飼うとしたら、ひもじい思いはさせたくない。 当の本人…いや、本犬か?まぁいいや。とにかく野良はようやく満足したのか、俺にまとわりついたままで地べたに伏せている。……正直、暑苦しい。 結局、食事を済ませた頃には俺は汗だくになっていたのはやはり犬のせいだろーな……はぁ。
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