第3話~既知感~

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「………おい」 「ん?」 殺人的に強い日差しのせいなのか、吹き出た汗を目一杯吸い取った服を撫でながら、一度空を仰ぎ見る。あぁ良い天気だ……いやいや、違う。 俺が言いたいのはそんな事ではない。 「……何でこのクソ暑い中俺は畑仕事をやらされてんだ?」 それだ。 食事を終えた後、有無を言わさず沙織に連行され、たどり着いたのは視界いっぱいに広がる畑。そして渡されたのは麦藁帽子と軍手と長靴。 明らかにおかしいだろ? 流れ的にというか……とにかくおかしいと思うんだよ俺は。 「仕方ないじゃん!小梅婆ちゃんが腰悪くしちゃったんだからさ」 「だ・か・ら!なぜ俺までやらなきゃならんのだ!?」 「暇そうだったから」 生憎、お前が思うほど俺も暇ではない。 今晩のおかずを探さなきゃならんだろ?部屋の掃除しなきゃならんだろ?家の改修しなきゃならんだろ?ほら、予定はいっぱいだ。 貧乏暇なし。暇がなければ慈善作業は願い下げである。……とは言うものの。 何だかんだ言いつつ、しっかり手伝ってる辺り、俺はかなりのお人好しなのかもしれない。 凝った背中を解そうと背伸びを一つ。次いで、七海の姿を探す。 「……機械みたいに働く奴だな」 というか、なぜに七海まで付き合ってくれてるのかが謎だ。 「ワンッ!!」 「あ~はいはい。お前も付き合ってくれてたんだっけな」 汚れた土塗れの軍手で野良の頭をガシガシと撫でると、嬉しそうに尻尾を振る。 こいつもこいつで何故にここまで俺に懐いているのかが謎である。 「さて、と…」 もう一頑張りしようかと腰を落とした時。 「……あの~」 「ん?」 田んぼの脇を通る畦道。そこに、一人の女性がいた。 胸くらいまで伸ばした栗色の髪は、綺麗にウェーブがかかり彼女の整った顔立ちを更に引き立てている。 多分、俺よりは5、6歳は年上であろう女性は、申し訳なさそうな表情で近づいてくると…コップに注がれたお茶を差し出してきた。 「ごめんなさい。うちのお祖母ちゃんが腰を痛めたばっかりに…」 「お祖母ちゃん…?」 どういう事だろうか?一人首を傾げながら考え始めるが…。 「美咲さ~ん!」
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