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沙織に連れられ、村を見て回ること3時間…。
いい加減疲れた俺達は、沙織の行き着けの店とやらに行く運びとなったのだけど。
「………ここか?」
「うん♪ここの出す昆布茶が美味しいんだから」
昆布茶……昆布茶か。
他人の嗜好に口を出すつもりはないが、今をときめく若者が昆布茶か…。
なんだか意味もなく泣きたくなった。
いやいや、それよりも問題なのは…。
「ここって、あきらかに民家じゃあ…」
「うん。小梅婆ちゃんの家」
「いや駄目だろっ!?」
あっけらかんと答える沙織に対し、声高に抗議して、今一度小梅婆ちゃんの家とやらを眺めた。
うむ。だいぶ築年数が経っているのだろう。
年月を重ねた木造住宅は、それだけで趣を感じさせる。
「小梅婆ちゃ~んっ!」
「って、こらこらこらこらっ!!」
人が物件観察を行っている間に、既に沙織は家の中へと入って行った。かと思いきや、玄関から身を乗り出し…。
「早く来なってば!小梅婆ちゃんの昆布茶って美味しんだから」
「……誰もそんなこと心配してねぇ~…」
渋々ながらも、俺も後に続く。
「お、おじゃましま~す…」
「あら、いらっしゃい」
いきなりラスボス登場っ!?
目の前に現れた小梅婆ちゃんらしき人物に軽くたじろぎながらも、お辞儀をした。
「おやおや、随分と礼儀正しい子だねぇ」
「……恐縮です」
「ふふふ…そんなに固くならんでもよいよ。さぁ、沙織ちゃんならすぐそこの部屋にいるからね」
そう言って指さされた部屋は、居間……だろうか?それらしき部屋へと繋がっているらしい。
軽く会釈をして、俺もその部屋へと入っていく。
瞬間………俺を、畳に寝転がっている沙織が出迎えた。
「どんだけリラックスしてんだよ…」
「ちゃんと小梅婆ちゃんから許可貰ったよ?」
誰もそんな心配はしてないのである。
が、結局は小梅婆さんから昆布茶をご馳走になってしまい…。
俺は、沙織の提案で学校を見に行くことにしたのだった。
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