8人が本棚に入れています
本棚に追加
「ここ、か?」
ずいぶんと趣のある……悪く言えばボロい校舎らしき建物の前に立ち、沙織に尋ねる。
正直、地震で倒壊しないかが心配だ…。
「まぁ、かなり古いけどね」
「耐久性に問題がありそうなんだが…」
「うん。運が悪いと床が抜けて最悪、大惨事になるよ」
なんでもない事のようにあっさりと言い放つ沙織に辟易としつつも、2人して中に入っていく。
流石に日曜日のせいか、校内に人の気配はない。
ギシギシと嫌な音を立てる木目の床を歩きつつ、中を観察していると……やはり、というか流石というか狭かった。
なんたってこの学校には二階ってもんがないらしいのだ。
平屋の学校なんてのは初めて目にする。
「何人の生徒がいるんだ?」
「20人。そもそも、授業だって全生徒合同でやってるくらいだしね」
「学年関係なしか……そりゃ先生も大変だろ」
「あはは、違いないね」
なんて笑う沙織だったが、不意に立ち止まり窓の外に目をやった。
窓の外にあるのは校庭…だろうか?
やけにただっ広いグラウンドの中心にポツンと誰かが立っている。
ハッキリとは見えないが、おそらくは女子。
沙織は彼女(?)を認めると窓を開け放ち…。
「七海ー!」
大声でその名前を呼んだ。
彼女もそれに気付いたか、こちらに顔を向けるとゆっくりと近付いて来た。
「やっほ、七海♪」
「(コクリ)」
俺達の前まで来たのは、やはり女子だった。
沙織の挨拶に頷きだけで答える七海と呼ばれた娘は…。
肩で切り揃えた黒髪に、吸い込まれるように深い黒の瞳。
まるで日本人形のような娘だと、それが彼女の第一印象だ。
もっとも、人形のように表情に乏しいのも第一印象をより強めた要因となったが…。
「この人…誰?」
ここにきて七海も俺の姿を認めたか、随分とか細い声で無表情のまま沙織に尋ねた。
「転入してきた皐くん。で、さっちん、こっちが一個下の七海だよ」
「よろしくな。…えっと」
「七海でいい。…みんなそう呼ぶから」
「わかった。改めてよろしくな、七海」
「(コクリ)」
頷きだけで返されるの。
随分と抑揚のない娘だな…。
まぁ、やかましいよりはいいけどさ。
最初のコメントを投稿しよう!