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「そういや、七海はあんな場所で何やってたんだ?」
七海も加わり3人になった俺達。
学園内の散策中にふと気になり聞いてみた。
あんな場所、というのは校庭の事だ。
このクソ熱い中、あんな場所に日傘も刺さずに立っているなんて自殺行為としか思えん。
だが当の七海は、こちらに視線だけを向けて…。
「……別に…」
極めて簡潔に答えて、また視線を前に向けた。
あれ?
もしかして俺って嫌われてね?
なんて軽くショックを受けつつも、ギシギシと煩い廊下を歩いていく。
だが、そんな俺に気付いたのか沙織が苦笑いを浮かべながら…。
「あの子、誰に対してもあんなだから」
そっと耳打ちをしてきた。
「……なんか理由でもあんのか?」
「さぁ……昔はあんなじゃなかったんだけどね」
「ふぅん…」
まぁ、嫌われてる訳じゃないならいいけどさ。
ただ一つ気になったのは…。
彼女の右肩。
髪で隠れた位置に包帯が見えた事だった。
ただの怪我だと言われればそこまでだが…。
なぜだろう。
どうしても俺には、ひっかかりが残ってしまっていた。
…………
……
…
そして、太陽が西に沈みかけはじめた頃。
沙織と七海に連れられて、俺は居候する親戚の家に向かっていた。
「悪いな。わざわざ」
「別にいいよ♪っていうか、案内しなきゃ分からないんでしょ?」
「ぐ……まぁ、確かに」
答えに詰まる俺が楽しいのか、沙織はケラケラと笑い、やがて…。
「でも、日向さんの家って確か…」
小さく、何かを呟いた。
いまいち聞き取れず、聞き返す。
「ん?」
「ううん!何でもない……気のせい、だろうから」
「何が?」
その問いには答えはなかった。
でも、俺はすぐに知る事になる。
沙織が何を呟いたのか。
何を気のせいだと思っていたのか。
それは、予想を遥かに上回る形で、俺の前に姿を表したのだった。
「……なんだよ…これ」
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