第2話~悲惨な始まり~

1/6
前へ
/17ページ
次へ

第2話~悲惨な始まり~

それは、今にも崩れそうな…。 朽ち果てた家の残骸だった。 壁はボロボロ。 所々には穴が開き、天井も完全に崩れ落ちている。 それは、誰が見ても人が長年住んでいないと分かるような佇まいだった。 「……ここで、間違い…ないんだよな?」 「う、うん…。この辺りで日向っていう苗字の家はここだけだから…」 「でも…親父はここだって」 「…何かの間違いじゃないの?」 七海が表情を変えずに、そう呟いた。 だが、それを確かめようにも、残念な事に親父に確認は取れないのだ。 親父の奴は確定住所はおろか携帯すら持っていないのだから…。 「くそっ…どうすっかなぁ」 頭を抱えるも、名案など浮かぶはずもない。 野宿でも構わないんだが、藪蚊が飛び回っている中で寝るのは少々抵抗がある。 というか全力で遠慮したいくらいだ。 「……ここに住んでた人は?」 半ばヤケクソ気味に沙織に尋ねる。 だが、返ってきた答えは予想を遥かに上回る物だった。 「詳しくは知らないんだけど……村の人達の話じゃあ夜逃げしたとか」 「おいおい…」 寄りにもよって夜逃げかよ…。 それじゃあ近くに引っ越した可能性は0じゃねぇか。 いよいよ以てどうしたもんかなぁ…。 そう思案し始めた時、突然。 「私の家に来る?」 「は?」 短く、何でもない事のように七海が呟いた。 何を考えているのか。 今日会ったばかりの男を家に泊めるなんて、有り得ない事だ。 しかし、七海は無表情のままでその真意は伺い知れない。 「……うちは両親が放任主義だから…問題ない」 「いやいやいやいや!流石にそれはマズいだろ?いくら親御さんが放任主義としても、どこの馬の骨とも知れない男を泊めたりしないだろ!」 「問題ない」 「いや、でもだな…」 「問題ない」 尚も繰り返す七海。 だが、その好意は受け取れない。 かといって住む家はない。 なんか踏んだり蹴ったりだ…。 まさか親父の奴分かってて俺をこんな場所に送ったんじゃなかろーか? 「………まぁ、なんとかなるか…」 自分に言い聞かせるように呟き、朽ち果てた荒ら屋に足を踏み入れる。 ……と、部屋の一角。 正面からは見えなかったが、6畳間ほどの部屋だけ、屋根が残っている部屋があることに気付いた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加