第2話~悲惨な始まり~

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ここなら、住むだけなら何とかなりそうだな…。 試しに畳の上に土足で上がるが。 バキャ!という音と、やけに湿った感触を足の下に感じた。 ……畳は駄目か。 となると、レジャーシートを使えばいいだろう。 幸い、ガスはコンロがあるから、それでなんとかなるとして…。 「……後は食い物と風呂だな」 レトルト系はあまり持ってきてないから、保ってせいぜい1週間だ。 「さっち~んっ!」 正面…玄関だったであろう場所から沙織に呼ばれ、急いで戻る。 「なんだ?」 「いや、どうするの?七海ん家に厄介になる?」 「…問題ない」 「…あ~、いや。奥に一応使えそうな部屋が一つだけあったから、そこに住むわ」 「でも食事とかお風呂は?」 「食事は……まぁ山菜とか川魚とか採れば何とかなるだろ。風呂は川で身体洗えばいいし」 文明の薫りはまったくしない生活だが、人に迷惑をかけるよりは遥かにマシと言える。 「つー訳で悪いな七海。気持ちだけ貰っとくわ」 「……そう」 「七海…?」 そう呟く七海の顔が僅かに曇ったように見えたのは、夕暮れが見せた幻だったろうか? だが、瞬きをした瞬間に七海の表情はいつも通りの無表情に戻っていた。 「まぁ、さっちんがそう言うなら私達は構わないけど……大丈夫なの?」 「なんとかなるだろ。世の中意外とそんなもんだしな」 「言うね~♪でも、困った事があったら遠慮なく言ってよね」 「ああ。頼りにしてるぜ?」 「あは♪お姉ちゃんに任せなさい!」 そう言うと、沙織は七海を引き連れて踵を返し、じゃーねー!なんて言いながら、帰って行った。 2人の背中を見送った後、これから暮らす事になる我が家を見上げる。 あ~…ちくしょう。 やっぱ何回見てもただの荒ら屋だよなぁ。 自然と漏れる溜め息。 最悪の暮らしが待ってるのは想像に難くない。 だが、最悪という事は、これ以上は落ちないと言うことでもある。 「……まぁ、なんとかなるだろ」 笑ってれば人間何とかなる。 誰の言葉だったか忘れたが、ごもっともだ。 なら笑っていよう。 空を見上げる。 そこには、強く輝く一番星。 ほら、いつでも満点の星空が見れると思えばプラスだ。 そう、自分に言い聞かせて…。 俺は我が家へと入って行った。
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