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玄関を開けると里美がびしょ濡れの格好でそこに立っていた。
『ごめん、待ったでしょ?電車が遅れたみたいで』
自分が濡れたことなど構わず、それだけわ里美は言った。
いつもそうだ。
僕は思った。いつも里美は自分のことより人のことを想いやる。
里美のそんな気取らない優しさが僕は好きだった。
里美が風呂からあがると僕はグラスに注いだ麦茶を渡した。
彼女はそれを二回に分けて飲み干した。
『ねえ、僕の寝巻きだけど大丈夫?』
そう言い、もう着ることもなくなった寝巻きを彼女に渡した。それが思ったよりも似合っていたので僕らは目を合わせて笑い合った。
こんなちっぽけな幸せがいつまでも続けばいい。と心底そう願った。
『ねえ、あの子たちは元気なの?』
彼女が心配そうに聞いた。
あの子たち…彼女は僕が飼う爬虫類をまとめてそう読んだ。
彼女は爬虫類を見るのが苦手でもちろん触ることも出来ないが、僕よりも【あの子たち】を心配しているように思えた。
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