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カフェから出た後、私達はぶらぶらと歩いた。
途中、ペットショップに寄った。
まだ産まれたばかり、とも思われる犬の赤ちゃんを見て、可愛いね、とお互いに笑い合った。
彼は店員の方に許しをもらって、小さな犬を抱かせてもらっていた。
よしよし、と言ってまるで自分の赤ちゃんのようぬ扱っている。
その彼の姿を遠目に私は微笑ましく思った。
「ほら、ミユも持ってみなよ、可愛いから」
急にそう言われ、小さな犬が私の胸にと渡される。
白くて柔らかい毛が暖かくて気持ち良かった。
なんにも考えてないような、その顔をむしょうに愛しく感じた。
どれくらい、そうしていただろう。
私の胸の中でその犬は寝てしまい、閉店時間とともに名残惜しむようにしてその場を去った。
ペットショップを出ても話題はつきなかった。
このまま、一日が終わるんだな、と夜の街を二人して歩きながら考えていた。
携帯に目を向けても、着信もメールも、ない。
彼が不思議そうに私を見ていた。
「なんか、さっきから元気がないね」
みすかされているようで、途端居心地が悪くなる。
「そんな事ない。すごく楽しいもん。だから、今日が終わってしまうのが、悲しい。修学旅行の最終日みたいな」言って笑った。彼もつられて笑顔を見せる。
半分、本当で
半分、嘘。
しばらく沈黙が流れた後、彼は切り出すようにして言った。
「そろそろ行こうか」
そう言って指指した所には、こじんまりとした、お洒落なホテルが見えた。
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