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「…………っ!!」
まとわりつく恐怖を振り払うように、俊敏な動作で後ろを振り返る。
あるのは、通常ならば人が入り込めそうにない、鬱蒼とした茂み。
その奥は、街灯の光さえ届かない、真っ暗な夜の闇に包まれている。
「………………」
しん…と静まり返る広場。
遠くの方で、噴水の水音だけが微かに聞こえてくる。
心臓の動悸が嫌に激しい。
いつの間にか呼吸が乱れていた。
暗闇に満ちた茂みを、じっと凝視する。
感じていた筈の視線は、いつの間にか消え失せていた。
しかし、気配は依然として残っている。
騒がしい街中の喧噪から、いきなり夜の田舎道に切り替わったような、不自然な静けさ。
修学旅行で、巡回の先生の足音に驚いた生徒たちが、一斉にお喋りを止めて、慌てて布団に潜り込んだ直後の――――そんな、白々しい静寂。
いる。
目には見えない。
視線も感じない。
けれど確かに、この広場には、自分以外の誰かが潜んでいた。
ぞわぞわと這い上がってくる、得体の知れない悪寒。
その不気味さに身震いする。
………どうする。
思い切って、あの茂みの中を探ってみるか。
それとも、何も気づかなかったフリをして、今すぐこの場から立ち去るか。
僕は―――――――
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